診療について
熱中症の初期症状や効果的な予防法とは?内科専門医が解説します。
7月も中旬になりかなり暑い日が続いていますが、皆様は体調はいかがでしょうか?
この時期に気をつけないといけない危険な病気と言えば「熱中症」です。
今回は是非知っておいてほしい「熱中症」に関する基本知識を書きたいと思います。
①そもそも熱中症とは?
皆様は「熱中症」についてどんなイメージを持っていますか?
「熱中症って脱水のきついやつですよね?」
「熱中症を予防するためにしっかり水分補給しています!」
大体こんなイメージではないでしょうか?
まずは「熱中症」という病気を正しく理解することが大切です。
「熱中症」の定義は、
「暑熱環境における身体適応の障害によって起こる状態の総称」
とされますが、すごくわかりにくいですよね。
簡単に説明すると、「暑い」と感じる環境で体調が悪くなった場合では、他に明らかな原因がない限りは「熱中症」と考えてよいと思います。
暑い環境の中で活動(仕事やスポーツ)をしていると、体内で熱が産生され、深部体温(体内の温度)が上がります。
体温が上昇すると、今度は体温を下げるためにどんどん汗をかくことになるわけですが、暑い環境では「熱産生」と「熱放散」のバランスが崩れて、深部体温が上昇し、熱中症になってしまいます。
つまり「熱中症の根本的な原因は体温上昇」であることは是非知っておいてください。
ちなみに近年の異常な暑さでは、たとえ屋内にいたとしても室温管理が不十分な場合では熱中症になってしまうことがあるため注意が必要です。
では、どのような症状が出現したら熱中症を疑うべきなのでしょうか?
②熱中症の初期症状は?
熱中症の症状は、「倦怠感」「大量の発汗」「立ちくらみ」「口渇感」「嘔気・嘔吐」「筋肉痛」「こむら返り」「痙攣」「頭痛」「意識障害」などたくさんありますが、どの症状が最初に出現するかは個人差があるため一概には言えません。
特に「倦怠感」「大量の発汗」程度では熱中症の症状とは考えない方も多いと思いますが、暑い環境でこのような軽い症状が出現した時点で軽度の熱中症の可能性があるため注意が必要です。
熱中症は重症度により「軽症」「中等症」「重症」に分類され、重症になると若くて健康な人であったとしても命に関わる場合があります。ですので、軽症の段階で熱中症であることを認識し、仕事や運動を中断、休憩することでそれ以上悪化させないことが重要です。
また基礎疾患のある高齢者では軽度の熱中症であっても、命に関わってくることがあるため、真夏の日中はあまり外出しない方が無難かもしれません。
ちなみに「軽症の熱中症」と「中等症以上の熱中症」を見分けるポイントとしては、「意識障害」も有無が重要となります。
明らかに意識を失っている状態であれば重症であることは容易にイメージできるかと思いますが、軽度の意識障害では「何となく言動がはっきりしない」というくらいの症状であるため、このような状態であれば医療機関を受診するのがよいと思います。
③熱中症の効果的な予防法は?
それでは熱中症を予防するためにはどのようにしたら良いのでしょうか?
- 日中の外出を避ける
「気温」や「暑さ指数」が高い日では熱中症の危険が高まるため、不要な外出を避けることが無難です。ただし近年の暑さでは、屋内でも熱中症になることがあるため、エアコンなどで室温を適正に保つようにしてください。
- 適切な水分補給を行う
夏では上がった体温を下げるためにたくさんの汗をかきます。そこで水分補給が不十分だと脱水が進み、更に体温が上がりやすくなり、熱中症になった場合に重症化しやすくなります。
よって、水分補給が重要であるのは皆様も知っての通りだと思います。ですが、水分補給の方法を誤ると、熱中症予防にならないだけでなく、デメリットが生じることもあるため注意が必要です。
では「適切な」水分補給とは?
まずはなるべく冷たいドリンクを飲むようにしましょう。冷たいドリンクであれば、水分補給だけでなく、体温を下げる役割も果たすことができます。
次に何を飲めばよいのでしょうか?
屋内にいる時であれば、冷たい水やお茶などで問題ありません。ですが、屋外での仕事や運動で大量に汗をかく状況では、水分だけでなく塩分の補給も必要になるため、「スポーツドリンク」での水分補給が望ましいです。
ただし市販のスポーツドリンクでは「糖分」を多く含む商品が多いため、「糖尿病」がある人では血糖値への影響が問題になります。実際、大量のスポーツドリンクの摂取がきっかけで糖尿病が一気に悪化するケース(ペットボトル症候群)は時々遭遇します。
糖尿病がある方の場合では、スポーツドリンクの中でも「カロリーゼロ」の商品であれば、血糖値への影響を最小限に抑えることができるため、気になる方は主治医へご相談ください。
- クーリングで体温を下げる
いくら水分を補給していても、この暑さの中では体温上昇を抑えることができない場合はあります。
暑い環境で少しでも体調不良を感じた時は、空調の効いた部屋や日陰で休憩し、少しでも体温を下げるようにしてください。
最近では「手足の浸水法」も深部体温を下げるのに効果的とされます。バケツに冷水をいれて、手足を浸けるという簡便な方法ですので、うまく使用するとよいと思います。
屋外での仕事では「クーリングベスト」などの冷却グッズを活用するのも有用です。冷却グッズは様々な商品が売られていますので、好みに合わせて利用してみて下さい。
いかがでしたか?まだまだ暑い日が続きますが、熱中症に気をつけながらこの夏をお過ごしください。