診療について
突然の痛みの正体は?帯状疱疹について内科専門医が解説します。

皆様は「帯状疱疹」という病気をご存知ですか?
最近、帯状疱疹の患者さんが続けて当院を受診されたため、今回は「帯状疱疹」について解説したいと思います。
帯状疱疹ってどんな病気?
「帯状疱疹」は、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる皮膚の病気です。このウイルスは、子供の頃にかかる水痘(水ぼうそう)の原因ウイルスであり、一度感染すると体内(神経節)に潜伏し続けます。その後、様々な原因により免疫力が低下した際、ウイルスが再活性化することで帯状疱疹を発症します。特に50歳以上の方や、ストレス、過労、慢性疾患などで免疫力が低下した人に多く見られるとされます。
どんな症状が出現しますか?
帯状疱疹は、初期には患部にかゆみやチクチクとした痛みが現れ、その後、神経分布に沿った帯状の赤い発疹や水疱が出現します。体幹部(胸や背中)に出現することが多いですが、顔面や四肢に現れることもあります。中には痛みを自覚してから1~2週間ほど経過して発疹が出現する場合もあり、そのようなケースでは診断に難渋することがあります。帯状疱疹が厄介なのは、発疹が治まった後も痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」が後遺症として残る場合があることです。特に高齢者では「帯状疱疹後神経痛」のリスクが高いとされ、痛みが数か月から数年続く場合もあります。
どんな治療法がありますか?
治療としては、抗ウイルス薬(バラシクロビル、ファムシクロビル、アメナメビルなど)を発症からできるだけ早期に開始することが重要です。これにより症状の進行を抑え、帯状疱疹後神経痛などの合併症のリスクを低減することができます。また、抗ウイルス薬の投与と同時に痛みのコントロールも行います。痛みに対しては、主に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンが用いられ、必要に応じて神経痛を和らげる薬(プレガバリン、ミロガバリンなど)も使用します。
予防法はありますか?
帯状疱疹を効果的に予防するためには、50歳以上を対象としたワクチン接種が推奨されています。現在、日本では2種類のワクチンが利用可能で、1つは生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)、もう1つは不活化ワクチン(シングリックス®)です。不活化ワクチンは、免疫抑制状態の方にも使用可能で、発症リスクや帯状疱疹後神経痛のリスクを大幅に減少させることが示されています。ワクチン接種により、帯状疱疹を90%以上予防できるとされ、接種を受けたほとんどの方が帯状疱疹を発症することなく過ごせることが期待されています。
ちなみに当院ではシングリックスは1回22,000円(2回接種が必要です)で接種可能です。やや高額には感じますが、帯状疱疹や後遺症(帯状疱疹後神経痛など)の予防効果を考慮すると決してコストパフォーマンスは悪くないと思います。
最後に
帯状疱疹は早期の診断と治療が非常に重要であり、症状が疑われる場合はすぐに医療機関を受診することが大切です。痛みしか症状がない場合では、他の病気(内科疾患、整形外科疾患など)との区別がつきにくい場合がありますので、一度医療機関でご相談ください。
また、高齢者や慢性疾患を抱える方では、帯状疱疹ワクチンについても主治医と相談することをお勧めします。帯状疱疹は予防できる病気ですので、積極的な予防対策を心がけましょう。